シングルアームパンタグラフについて

シングルアームパンタグラフ(以下、「Sパンタ」と略します。)は昭和30年(1955年)にフランスの大手鉄道用機器メーカーフェブレー社 が開発し特許を取得したもので、欧州では古くから路面電車から高速車両まで幅広く普及していました。

わが国では昭和30年代に路面電車で使われていましたが、本格的に普及し始めたのは同社の特許保護期間が終了して日本国内メーカーによる製造に制約が無くなった1980年代末以降とのことで、これを本格的に採用したのは平成2年に営業を開始した大阪市交通局の70系電車とのことです。首都圏では平成5年頃、新京成の8900形に採用されたのが一番早いようです。

重量や部品点数や着雪の影響も少なく製造・保守コストの面でも有利なことから、その後ほとんどの新型車両に採用されることになりました。このSパンタの本格的普及により、従来の菱形パンタグラフは平成17年以降日本国内では製造されていないそうです。(主にウィキペディアより引用)


211系のパンタグラフから気が付いたこと

211系にはもともとPS21形という菱形パンタが装備されていましたが、平成20年9月頃に一部の列車からPS33E形のSパンタの付け替えが始まり、その後、ほとんどの211系にSパンタが取り付けられました。スリット写真にあるA36編成のように1両に2基のSパンタがついている編成もあります。(注)

ところが、その後も211系のSパンタを見ていたところ同じ路線を走るE231系のSパンタとすべて取り付け方向が違っているのに気が付きました。並行して走る京浜東北線のE233系1000番台もE231系と同じ方向です。また、山手線E231系500番台も同じ方向でした。

そこで今まで撮影したJR等の車両のスリット写真のSパンタを調べたところ、211系だけが取付け方向が違っているというわけではなかったことがわかりました。なお、当サイトでは今まで新幹線を除外していましたが、最近、ミニ新幹線について撮影を開始しましたので、対象に追加しています。

注)現在、211系の編成は平成27年3月に東北縦貫線「上野東京ライン」が開通予定のために既に上野口では見られなくなりましたが、この特集を始めるきっかけをつくってくれたものなので紹介させていただいております。


パンタグラフの取り付け方向の分類について

前述のように側面写真専門の当サイトの特徴を最大限に利用してJRや私鉄のSパンタについてスリット写真をくまなく調べてみたところ、上の図のように3つのタイプに大きく分類できることがわかりました。説明上、パンタのタイプをA、B、Cのタイプで略称します。

上の図で左はSパンタの構造の概略図です。その右はSパンタが実際の車両の屋根に取り付けられた状態を示しています。それぞれのタイプの違いは、Sパンタの人の腕の肘(ひじ)に当たる部分が取付けられた車両を中心としてどちらの方向を向いているかによります。この見分け方は車両の左右どちら側から見ても判断できるのでわかりやすい方法です。

Aタイプは取り付けられた車両の外に向いて取付けられた外向きタイプで、Bはその逆で肘が車両の中央方向に内向きになっています。Cタイプは、1両に2基のSパンタが取付けられている例で、お互いに肘が車両の外方向に向いていることでAタイプを2基取付けています。このCタイプについては単に2基のSパンタが逆方向に取付けられているという見方はしないのがこの分類の仕方の特徴です。

以下にこの方法で分類したSパンタについてJRについては写真付で、私鉄については一覧表で作成しましたのでご覧ください。なお、この分類方法については説明のために必要ということで考えたもので、何ら正式なものではありません。


シングルアームパンタグラフ(Sパンタ)の取付け方向による分類

<<JR編>>

Sパンタの肘が車両の外側に向いているA(外向き)タイプ  Sパンタの肘が車両の内側に向いているB(内向き)タイプ
   
 秋田新幹線E6系:PS209形   山形新幹線E3系:PS206形
 
山形新幹線E3系700番台「とれいゆ」:PS206形  中央線201系:PS35C形
 
宇都宮線、高崎線、東海道線E231系:PS33B形  京浜東北線の後に京葉線転出209系500番台:PS33A形
 
京浜東北線E233系:PS33D形  高崎線、宇都宮線211系:PS33E形
 
総武本線E259系:PS33D形 上の写真と反対側から撮影  ジョイフルトレイン(彩):PS32形 485系初めてのSパンタ
 
中央本線E351系:PS31A形 スーパーあずさ用  中央本線E257系:PS36形 あずさ用
 
ジョイフルトレイン(和み)E655系:PS32A形  常磐線E531系:PS37A形
 
山手線E231系500番台:PS33形  常磐線E653系:PS32形 フレッシュ日立
 
115系1000番台:PS35形 新潟色  JR西日本E683系4000番台:WPS28D形 サンダーバードです
 
 JR東海371系:PS27A形 あさぎり用
   
    JR東日本651系1000番台:PS33形


<<私鉄編>>
下の表から車両形式欄の形式等をクリックすると、実際に
Sパンタを搭載した各車両のスリット写真がご覧になれます

電鉄会社名 車 両 形 式 分類
小田急電鉄 30000形EXE A
50000形VSE C?
60000形MSE A
1000形 B
3000形 A
4000形 A
8000形 B
京王電鉄 8000系 A
9000系 A
京成電鉄 ニュースカイライナー A
3050系 A・C
3000系 C
京急電鉄 新1000形 A・C
相模鉄道 8000系 A
新京成電鉄 8800形6連 C
8900形 C
N800形 C
近畿日本鉄道 22600系 A
3220系 B・C?
京阪電鉄 3000系  A
阪急電鉄 9300系 C
西武鉄道 20000系 A
東京メトロ 08系 A・C
東急電鉄 5000系 A・C
5050系 C
6000系 A・C
8090系5連 A
8500系5連 A
東武鉄道 250系 A
30000系 A・C
50050系 A

検討結果について

当サイトの画像を検討した結果、以下のことがわかりました。

同じ京浜東北線の車両でも209系とE233系で昔と今は違うのがわかりました。また、同じ中央線でもあずさとスーパーあずさでは違うこともわかりました。新しく追加したミニ新幹線では、意外にも秋田新幹線E6系と山形新幹線E3系の取り付け方向が異なっていたことがわかりました。また、JRではサンプル画像が少ないこともあるのかCタイプの編成は見られませんでした。
E233系については予備パンタを上げればCタイプになりますが、常時使用していないので今回Aタイプに分類しています。また、E259系の予備パンタや211系の霜取り用パンタについても同様です。

JRでBタイプが多い訳を考えるに、まず交流電化区間を走る電車が屋上機器の配置からBタイプにしたことが考えられます。しかし調べてみるとJR九州の交流型特急電車787系や883系が10年ぐらい前からSパンタに交換されていますが、交換後のSパンタはJR東日本と反対向きの外向きAタイプであることから、Sパンタの向きは設計者の好みによる部分もあるのではないかと思えます。

私鉄については上の表を見ればわかるとおりAタイプが一番多いのですが、次に1両に2基のSパンタを搭載するCタイプが多いのが特徴です。これはパンタグラフの離線があると電力回生ブレーキの効きが悪くなることや、夏場の冷房の電力をより確実に確保するためにパンタグラフの数を増やしているようです。なお、私鉄ではBタイプは例外的です。

※この私鉄の編成の中で前述のタイプに収まらない興味深い画像がありますのでご紹介します。
そのひとつは下の写真のように小田急の豪華ロマンスカー50000形VSE車で、AからCのタイプの中でいわばC(2基)タイプなのですが、1両に2基のB(内向き)タイプのSパンタが付いています。連接車であるが故にこのようなつけ方になったようです。
 次に近鉄は車両数の多さに比べSパンタの搭載率がまだ少ないのですが、21世紀シリーズの3220系の編成の中の3221号車を見て1両にAタイプとBタイプが混在していることがわかりました。ここで小田急VSEと近鉄3220系について新たな分類を考えるときりがないので、今回はレアケースと考えることにしておきます。
VSEのスクロール画像はこちら
近鉄3220系のスクロール画像はこちら

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